い草ってなぁ~に?Vol 1

畳の材料「い草」を科学的見地から研究している方がおられます。北九州市立大学準教授 森田 洋先生です。森田先生の「い草」研究を順次ご紹介しますね。

北九州市立大学准教授/農学博士
森田  洋  
http://www.kitakyu-u.ac.jp/env/subject/d-life/Hiroshi_Morita/index.html

古くから日本人の生活を支えてきた畳。その原材料であるい草が実は古来より様々な形で利用されてきたことをご存知でしょうか。い草は茎中の芯が油をよく吸い上げる性質をもつことから、江戸時代には行燈の芯としても利用されていました。当時は電気などありませんので、い草は敷物とともに日本人の生活に欠かせない必需品でありました。
また、い草の用途の一つに薬草としての利用があります。日本最古の本草書である本草和名(918年)にはい草の薬草としての記載があります。これ以降の書物にもい草の薬草としての利用が頻繁に記されています。薬効としては利尿、膀胱炎、尿道炎、むくみ、不眠症、鎮静作用、水腫、小児の夜泣きなどに効果があり、用法は煎じて飲んだり、黒焼きにして飲んだりと様々です。薬草としての使用は、西洋医学の発展により今では殆ど使用されることがなくなりましたが、現在この薬草歴をもう一度見直そうと面白い取り組みを行っています。それがい草の薬湯としての利用です。い草を粉末化し、これを袋に入れて湯に浸けるというシンプルな方法でい草風呂が創れます。い草を入れた浴槽は、透明な淡黄緑色に染まり、畳表の香りがほのかに漂っています。
い草風呂の効果として、まず挙げられるものが次号でお話しする抗菌効果です。い草にはお風呂でしばしば問題となるレジオネラ菌や大腸菌に対して抗菌効果があります。またお肌がスベスベになる効果(保湿効果)があり、新訂和漢薬(1980年)には炎症、切り傷、打撲の改善にも寄与するとあります。現在、八代の市民団体の「ネイチャーやつしろ」がい草の入浴剤を作っており好評のようです(平成17年度熊本県物産振興協会銀賞受賞)。
日本人の生活を広く支えてきたい草を知らず知らずのうちに消し去ってしまわず,研究をきっかけに、その良さと懐の深さを再認識していただければと願っています。
 

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