畳は空気清浄器

畳は室内部材の中で、抜群の調湿性能を持っています。板材や新建材が多く使われるようになった現代では、一層フル回転をしています。余り知られていませんが実は、畳1枚(藁床)でなんとバケツ3杯分の水分を吸収する能力を持っていると言われています。6畳なら18杯分にもなりますね!元来畳は高温多湿の日本の気候風土を快適(より涼しく)に過ごす為の寝床(ベッド)として生まれました。蒸し暑い、寝苦しい夏に畳に触れた時のサラッとしたヒンヤリ感は、日本人なら誰もが認める所だと思います。発祥してからおよそ1300年、現代まで畳が受け継がれている一番の理由なんですね。海水浴に行くとゴザを売っています。あれはい草で出来ている物が多いんです。サラッとしますよね?カラフルだけどビニールシートはベタベタ居心地が悪いですよね?
 そんな優れた畳の機能にもおのずと限界はあります。現実にはバケツ3杯の水分を含んだ畳では暮らせませんよね。限界に近付いて行く過程で、様々な問題が起きてしまいます。ですから限界に近づかないように普段からの管理が必要になります。畳は草ですからね!
湿気の室内侵入は外気からばかりとは限らないんです。キッチン・お風呂・洗濯場。意外な所で、人から発せられる水分も意外に多いんです。畳は毎日頑張っているんですよ、黙ってますけど・・・(笑)。
 ただ、管理と言っても大掛りな事をする、お金を掛ける、訳では全く無いです。普段から天気のいい日に窓を開け、畳に風をあてるだけで良いんです。いわゆる「風通し」を心がけるだけで放湿効果が期待できるんですね。現在は家の構造の進歩(機密性・断熱性)で、すきま風(自然換気)は無くなり冷暖房効率が向上して快適になった反面、換気の機会・習慣が忘れられつつあり、室内空気の汚れを招き健康被害の原因を自ら作り出してしまた例も少なくないようです。空気の汚れは目に見えませんからね。風通しは畳の為だけに限らず、家全体の為・そこに暮らす人の健康のためにも、欠かせないひと手間なんですね。丈夫で長持ちの秘訣です。もし家に畳が無く換気もしなかったら、室内の湿気は何処へ行くんでしょうね?
梅雨~夏になってあわてて換気するのではなくて、普段からコツコツこまめな換気の習慣が大切なんですね。
換気は気分も爽やかにしてくれるはずですよ!

では、畳の優れた調湿機能の構造をご紹介しますね。
下の画像は「い草」の断面画像です。(画像提供:日本女子大学理学部 南澤明子先生)
先ず断面を見ると中がスポンジ状になっています。肉眼でも確認できます。このスポンジ状が優れた調湿機能の源なんですね!湿気を吸収してくれる部分です。また空気中の有害物質NO2(二酸化窒素)をも吸着、バクテリアが分解してしまうんですよ!
また側面を見ると、い草の表面に細かい縦の筋が確認できます。この筋と一本一本の織りの凸凹によって、特有のサラッとした肌触りになるんですね!

い草カラー断面画像(画像クリックで更に拡大!)画像提供 ㈱西谷

次に、藁(わら)の断面です。(画像提供:日本女子大学理学部 南澤明子先生)
藁の一本一本は中が空洞でストロー状になっていて、たくさんの空気層を持っています。畳の持っている強い弾力性・心地良いクッション性・耐久性・吸音・遮音効果・吸湿性・断熱性は、この藁の構造によって生み出されているんですね!この藁を30kg前後、縦横に配して圧縮し縫い付けた物が畳床(藁床)です。いやぁ~、自然のパワーって本当にすごいですよね!!

このように、畳はそれぞれの持つ優れた個性で作られている複合構造体なんです。
私たちの暮らしは、実はこんなに素晴らしいパワーに包まれていたんですね!

畳の持つ優れた調湿機能の実験結果をグラフにまとめました。
このように、畳は常にお部屋の湿度を40%に保つ性能を元から備えている事がわかりますね!
40%を境に室内湿度が上昇すれば吸収し、下降すればはき出してくれるんです。
恐らくこれまで長い間生存し続けて来た過程で、い草と藁自身が生きるために備えた機能なのかもしれませんね。人に優しいのは、必然と言えるのではないでしょうか?
昔、日本家屋には畳がたくさん敷かれていました。各部屋ごとに畳の機能が発揮されていました。でも現代は建築様式・生活様式やライフスタイルが変化して、全ての部屋が畳敷きと言うのもかえって暮らし難いと思います。
畳が少なくなった現代家屋だからこそ、畳はより一層フル回転で頑張っているんですね!

次に畳(い草)の持つ【空気清浄機能】を一つ一つご紹介します。
下のグラフでは、室内にある様々な部材の室内空気に含まれる有害物質・二酸化窒素吸着能力を比較しています。畳の圧倒的な吸着力が明らかですね!い草は単に吸着するだけでは無いんですよ、まだまだ凄いんですよ!い草内部のバクテリアが吸着した二酸化窒素を分解してくれるんです。畳は住む人の知らない所で、住む人の健康のために、毎日毎日頑張ってくれているんですね!

畳のもう一つの【空気清浄機能】、室内にある建材・家具・接着剤等から出る揮発性化学物質:VOC吸着機能をご紹介します。
先ず下のグラフは、同じ環境の部屋に畳が敷いてある場合と敷いていない場合のVOC(揮発性化学物質)の種類と濃度を比較したものです。この実験では実に52.4%も減少していますね!畳が吸着してくれているんですよ。

ただ畳はVOCに関しては、吸着はしますが二酸化窒素のように分解までは出来ません。そこで有効となるのが【ベイクアウト(畳乾燥処理)】なんですね。VOCは温度30~35℃から揮発し始めます。畳乾燥機は室温85℃~90℃で2時間乾燥殺菌しますから、畳乾燥と同時に畳が吸着しているVOCをはき出させる事が出来ます。特に、裏返しには絶対省けない重要なひと手間なんです。だから畳乾燥機は汚れた室内空気を外に出し、常に新鮮な温風で乾燥する熱交換方式を採用しているんですね!畳乾燥処理で大切な事は納品時にはキチンと畳をクールダウン(常温まで)する所です。微量でもVOCが残っていた場合、畳が熱いままだと揮発が続いている可能性があるからです。クールダウンする事で揮発環境には蓋をして、吸着機能だけを継続させるんです。念には念を入れる事で、畳の機能が再び元気を取り戻し頑張ってくれるんですね!

畳のベイクアウト(加熱乾燥)実験結果(トルエン)のグラフです。
ベイクアウトする事で吸着した化学物質を放湿して、再び畳の化学物質吸着能力が回復する事を表していますね!でも、畳の化学物質吸着機能にもおのずと限界があります。畳は取り外しが出来る・張替えが出来る唯一の床材・建築部材ですから定期的に畳替えをする事で、快適で安心な住環境を維持する事が出来るんですね!畳が発祥した1300年前には、既に畳は張替えをする事を前提にその作り方が確立されていました。先人はその時代すでに、畳の機能を知っていたのかも知れません。畳にもロマンがありますね!
 以上、畳を科学的見地から機能分析した結果、室内の【湿度調整】【有害物質吸着】って言う優れた機能を発揮している事が明らかになりました。住む人の知らない所で、住む人の健康・快適のために、ず~っと頑張ってくれているんですね!

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