い草ってなぁ~に?Vol 5

北九州市立大学准教授/農学博士
森田  洋 http://www.kitakyu-u.ac.jp/env/subject/d-life/Hiroshi_Morita/index.html
 

畳の効能でまず一番に挙げることができるのは、い草のリラックス効果です。畳の部屋にいると落ち着いてリラックスできます。この畳のリラックス効果は色の面から、そして香りの面から議論することができます。赤色をみると興奮するように、人間にとっても「色」というのは精神面で重要な役割を担っています。畳の黄緑、茶黄色は眠気を催すほどの安心感をあたえると言われています。また匂いの面からのリラックス効果絶大です。森林浴が気持ち良いように、緑がいっぱいの作物であるい草にも同じ効果が期待されます。この森林浴の匂いというのが、フィトンチッドという物質です。フィトンチッドはい草の芳香成分の約20%を占めている主要な物質です。またい草にはジヒドロアクチニジオリドという物質も芳香成分の約10%を占めています。ジヒドロアクチニジオリドは紅茶の芳香成分と同じものであり、それ自体には香りはありませんが、他の芳香成分を保香する働きがあります。さらにα―シペロンという物質も、い草の芳香成分の約6%を占めています。この物質にも鎮静作用があるといわれています。い草の香りで特徴的なのは、バニリンという成分を含むことです(芳香成分の約6%)。このバニリンという成分は、お菓子を作るときに使うバニラエッセンスの原料として知られている物質です。バニリンは精神の安定やリラックス効果に大きな関わりを持っているといわれています。このようにい草の香りには、バニラや紅茶などと同じようにリラックス効果をもたらすものが多く含まれているのです。このような香り成分は畳からだんだんと飛んでいきます。また香り成分と同じように、Vol  1でご紹介したい草の抗菌パワーも時間とともに消滅していきます。ですから皆さんのご家庭で敷いてそのままになっている畳も定期的な畳替えが必要となるのです。
 い草・畳は1300年以上の歴史です。約1300年もの間、日本人のライフスタイルで生き残りつづけた作物には、まだまだ私たちの知らない、未知なる魅力がきっとあると信じています。

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